女性ホルモン補充療法の実際です。
1.卵胞ホルモン単独療法
卵胞ホルモンがのぼせなどの症状に有効なのですが、単独で用いると子宮体癌の発生率が増えるため、子宮のある方(大部分の方でしょう)には短期間しか使用できません。子宮筋腫などで子宮を摘出された方に主に用いる方法です。飲み薬より投与量が少なくてすむ貼り薬もあり便利です。
2.卵胞ホルモン・黄体ホルモン周期的投与法
子宮のある方で、周期的に月経が起きた方が安心される方に用います。黄体ホルモンを使用することにより子宮体癌の発生率を低下させることができますが、副作用として浮腫や乳房痛、イライラ感などが出現することがあります。
3.卵胞ホルモン・黄体ホルモン持続的投与法
月経を起こさない方法ですが、始めの3〜6ヶ月間は不正出血が起きることがあります。1年を超えると出血の頻度は減少します。黄体ホルモンの副作用は同じです。
以前は(特に欧米では)長期間の治療が推奨されていましたが、アメリカでの大規模な臨床試験の結果、2つのホルモンの長期投与により、血栓症や乳癌の発生率が高まる傾向があることがわかりました。血栓症は日本人には少ないようですが、乳癌の発生率は5〜7年使用すると1.2〜1.5倍に増加するといわれています。ホルモン補充療法中の方は、定期的な血液検査と乳癌検診を受けてください。(ただし、この場合の乳癌は一般に悪性度が低く、早期発見が可能ですから、ホルモン療法を必要以上に恐れることはないと考えます。)
今回の最後に、女性ホルモン補充療法を受けない方が良い方を挙げました。
ホルモン補充療法は怖いというイメージをお持ちになった方も多いとは思いますが、非常に効果が高く、短期間の使用では副作用も少なく、産婦人科医が管理していれば安心な治療法だと考えられますので、この治療を薦められた方はお試しになられてはいかがでしょうか。
次回は漢方薬についてお話します。
※参考文献
青野敏博 編:臨床医のための女性ホルモン補充療法マニュアル(医学書院)
レディースクリニック ばんどう
院長 板東律雄
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